2004年07月04日

『少女椿』

サイド・ショーってご存知?
その昔、アタクシ達が生まれるもっと前。
KOO-KOOというサイドショーのスターがいたんだけれど、彼女の容貌がカッコウのようだったので郭公(カッコウ)というステージネームがついていた。

そしてその頃からたかだか80年かそこら。

数十年程前まではおそらく生まれてきた事を疎まれ、サイドショーの見せ物として売られてきたり、そこでも辛くないとは言えない短い人生を可能な限り前向きに生きていったと思われる彼等。それを可哀想だなんて思ったりしたことはないが歴史としてそういうことがあった、そんな人が存在したことは知識として仕入れ、興味深く思っていた。

そこから数十年たった今。某民放で「感動の美談」としてそこに映っていたのはまるでKOO-KOO。プロジェリアという病気だそうだが、平均寿命は13年。現代医学でも治療法法がまだみつからず通常より8倍から10倍の速度で老化していくそうだ。1回目も見たけど、複雑というかなんというか。KOO-KOOもおそらく十数年の人生だったはずだが、TVの彼女は両親からもみんなからもせいいっぱい愛されてる。そして私なんかより5万倍ほど前向きに生きている。

うちには何故かKOO-KOOのポストカードが戸棚にはってある。
はずそうとも思わないが、どういった意図ではったのかも忘れてしまった…。
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『少女椿』という丸尾末広の名作があるのだ…というのを友人に聞いた。この物語の舞台がまさにそのサイドショー…つーか、日本の話だから“見せ物小屋”。主人公は12歳で天涯孤独の美少女・みどりちゃん。ここにはKOO-KOOはいないけど、首の捩れた芳一、芋虫男・銀吉や蛇女、刃をの飲み込む大男やら手のない包帯男・鞭棄、男色の親方と美少年カナブンやらなんやら…ウケない見せ物小屋の中で、八つ当たりやら虐待やら…耐えるみどりちゃん。そんなところにあらわれたのが瓶に入ってしまう小人の奇術師・ワンダー正光。彼だけはみどりちゃんに常に優しく、助手としてみどりちゃんと二人三脚でこの世にも不思議な舞台を繰り広げるようになるのだが、彼のおかげで流行らなかった見せ物小屋は大盛況。そして、あんなに何をされても何をいわれても耐えてきたみどりちゃんが、このおぢさんの登場ですこーし物言いが変わってきたり、映画のスカウトがあらわれてからの態度に人間の心の闇がチラリ。そしてみどりちゃんを強姦したり虐めたりしてきた両腕のない包帯男が「本当は好きだったんだ」といい出すところにまたチラリ。その鞭棄に嫉妬の炎を燃やし、砂を喰らわせて殺してしまった様子を見られて冷たくなったみどりちゃんに落胆し、瓶に入れなくなってしまい、客の罵声に不思議な力を使いきり?大騒ぎになった末、辞めると言い出したワンダー正光にもチラリ。騒ぎになったことで金持って逃げてしまった親方にもチラリ。そして、見せ物小屋は解散。

おぢさんとみどりちゃんは二人で東京に向かおうとするが、バスを待つあいだにお弁当を買いに行ったおぢさんは、帰らぬ人となった。待てど暮らせど帰ってこないおぢさんを探して半狂乱で幻影の中を走り回るみどりちゃんの前にあらわれる見せ物小屋の面々といっしょにいるおぢさんの幻。そして棒を振り回しながら叫ぶ。

 「死んでしまえー」

このひとことがみどりちゃんの心の闇の奥深くにずっと押し込められていたから耐え忍ぶ事が出来たのか?そしてまたひとりぼっちになってしまった彼女は救いがあったのか?それとも彼女には救いようのない試練がまた待ち受けているのか?どちらとも言いようのない…ただ鬱々とした気分というのではなく、これが丸尾流なのかしら、見る人それぞれ、答えはあなた自身がもっている…ってこと?
私の好きなフレーズで「“救い”のないことが救いで “希望”のないことが希望」というのがあるんだけど、そんな感じではないでしょうか。

台詞もナレーションも全部文字だけ、音楽と効果音がすばらしく、余計に想像力を掻き立てられる。メディアも今どき流行りのDVDではなくてCDーR。大和堂というところから出ている“キネマCDーROM”というシリーズで、他にもあるらしいからゲットしてこようかしら?

機会があったらご賞味下さい。
ただ、頻繁に見るもんではないと思うけど(笑)。

posted by みし at 03:45| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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